腰に痛みがないのに、足が痛む

 

これは、足そのものが原因ではなく、腰からの神経が関わっているケースが多い

腰椎の周囲で炎症が起こると、プロスタグランジンなどの炎症物質が放出され、神経根が化学的に刺激されます。その結果、この刺激が腰ではなく足の痛みやしびれとして感じられるのです。

 

 

椎間板変性・ヘルニア・脊柱管狭窄症・腰椎すべり症などによる

神経周囲組織炎症

神経刺激の異常 or 圧迫

筋線維への異常信号伝達

不随意な収縮・こわばり

筋肉を「動かさないで」というブレーキ反応(防御性筋緊張)

血流低下・酸素不足

さらに緊張・痛みが悪化

 

 

椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が原因で、腰そのものには痛みがなく、お尻や足に痛みやしびれが出る

その背景には、神経と筋肉の深いつながり、そして緊張の裏で無意識的に働く防御反応(筋緊張によるブレーキ)が関係しています。

では、ヘルニアや狭窄症があると、なぜ太ももやふくらはぎがこわばるのでしょうか。

腰痛や神経のトラブルを抱えた方の多くが、このような筋肉のこわばりや緊張を感じた経験があるのではないでしょうか。

それは単なる筋疲労とは異なり、じわじわとした張りや、動かすと引っ張られるような不快感として現れます。

このように「腰に痛みがないのに足に症状が出る原因」は、神経と筋肉の密接な関係が深く関わっているのです。

 

 

[神経と筋肉の密接な関係]

 

神経と筋肉はつながっている。筋肉は、勝手に動いているわけではありません。

一本一本の筋線維には、神経がシナプス(神経筋接合部)を通じて接続、つながっており、そこから信号が送られることで筋肉は収縮します。

神経は「動け」という命令を伝えるだけでなく、筋肉の健康を維持するために常にその状態をモニタリングし、適切な緊張を保つとともに、栄養的な役割も担っています。

そのため、神経からの刺激が減ると、筋肉は徐々に伸張性・柔軟性・弾力性が低下し、やがて萎縮する場合もあります。

最終的には、筋肉が本来の機能を果たせなくなってしまいます。

また、ヘルニアや脊柱管狭窄症などで神経が圧迫されると、神経は本来のスムーズな信号を出せなくなり、誤った命令や、断続的な刺激を送ってしまい、その結果、筋肉に無駄な緊張が持続することがあります (これは自覚しにくい)。

 

 

 

【痛みと防御反応】

 

原因は腰にあるにもかかわらず、足に症状が現れている場合、それはあまり良好な状態とは言えません。

しかし、このような状態であっても、ご本人が自覚することは難しいのが現実です。

これは、身体が「これ以上悪化させないように」と無意識に筋肉を緊張させ、動きを制限しようとする防御反応(防御性筋緊張)によるものです。

この反応は、神経と筋肉の協調によって起こり、本人の意思とは無関係に働きます。無理に動かそうとすると、かえって症状が悪化する場合もあります。

 

 

【悪循環:緊張と血流障害】

 

筋肉が緊張すると血流が悪くなり、酸素が不足したり老廃物がたまりやすくなります。
その結果、筋肉のこわばりはさらに強まり、やがて筋肉や靭帯、腱を傷めてしまうこともあります。

こうして「痛み → 緊張 → 血流障害 → さらなる痛み」という悪循環に陥ってしまうのです。ただし、この場合の損傷は微細損傷であることが多く、症状は比較的軽いケースがほとんどです。そのため、単なる筋疲労と誤解され、正しい対応が遅れてしまうことも少なくありません。

 

 

【身体のサインに耳を傾ける】

 

このように、筋肉の張りやこわばりは単なる「筋肉の問題」ではなく、神経との連携異常によって引き起こされる身体の防御反応です。

身体は私たちが思っている以上に賢く、「今は動かすべきでない」というサインを出すことがあります。

大切なのは、そのサインを見逃さず、「なぜ痛むのか」「なぜ張っているのか」に目を向けることです。

それが、体の正しく向き合う上で大切なことだと思います。

 

 

 

【椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症における病変部位と症状の関係】

 

椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症においては、病変が脊柱管のどの部位に生じるかによって、現れる症状の種類や範囲が異なる。

特に、「中心部」と「外側部」のいずれに病変があるかは、臨床症状の鑑別において重要な指標となる。

中心部(正中部)に病変がある場合は、主に硬膜や馬尾神経全体が圧迫されることが多く、これにより鈍く重い腰痛や殿部の違和感といった局所的な痛みが出現しやすい。

 

また、下肢への放散痛は比較的少なく、あっても両側性で軽度なことが多い。

このタイプの痛みは、MRIなどの画像診断がなければ、筋筋膜性腰痛との判別がしにくい場合もある。

一方、外側部に病変がある場合は、神経根(L4、L5、S1など)が圧迫されるため、坐骨神経痛や下肢のしびれ・鋭い痛みといった神経根症状が現れやすい。

 

これらの症状は一般に片側性で、太もも、ふくらはぎ、足先などに沿って放散する。

腰の痛みより、足の痛みを訴える場合は、比較的病変を推測しやすい。

このように、病変の位置によって症状の性質が異なるため、問診による症状の分布と性質の的確な把握は、正確な診断および施術方針の決定において重要なのです。

 

 

 

 【病変の場所と症状の違い】

 

椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症では、神経のどの部分が押されているかによって、出てくる症状が変わります。大きく分けると「中心部」と「外側部」の2つのタイプがあります。

 

中心部にある場合

 

・腰の奥の「神経の袋(硬膜や馬尾神経)」が圧迫されやすい

腰やおしりの重だるさ、違和感が出やすい

足の痛みは少なめで、出ても両足に軽く出る程度

筋肉の疲れや張りからくる腰痛と区別がつきにくいこともあります

 

 

外側部にある場合

 

・足へ伸びていく「神経の根元」が圧迫される

・坐骨神経痛(お尻〜足にかけてのしびれや鋭い痛み)が出やすい

多くは片側だけに出て、太もも・ふくらはぎ・足先へと広がる

腰よりも足の痛みを強く感じるのが特徴です

 

 

 

最後に

 

「腰やお尻が重い」 → 中心部の病変の可能性
筋筋膜性腰痛に似ているため、発見が遅れるケースがある点には注意が必要です)

「足に強い痛みやしびれがある」 → 外側部の病変の可能性

 

このように症状の出方を詳しく確認することで、病変の部位をある程度推測でき、検査や適切な加療方針を立てやすくなります。

 

 

腰椎の神経は椎間板や関節の周囲の多数存在しています。そこに炎症や腫れが起こると神経が刺激され化学な反応が生じます。神経は腰から足へと電線のようにつながっているため、化学的炎症などによる神経刺激の信号が足の痛みやしびれとして感じられるのです。

 

 

 

2011 スーパーライザー神経照射法 真興交易医書出版部より引用 一部加筆しました