椎間板と重力負荷

 

腰痛を考えるうえで、椎間板の存在とそれにかかる重力負荷は、非常に重要な要素となります

 

 

 椎間板と背骨の健康について

 

背骨は、骨と椎間関節と椎間板(クッション)の組み合わせで構成されています。椎間板は、背骨の間に23個(+仙骨と尾骨の間に1個)そ存在し、体にかかる衝撃を吸収し和らげることで、三次元的な動きを可能にする重要な機能と構造を可能にしています。

 

椎間板の中心には髄核と呼ばれる粘性の高いゲル状の物質があり、その周囲は線維輪という弾力性のあるコラーゲン線維で取り囲まれています。椎間板の水分量は80~90%で、20~30歳頃にピークを迎え、その後はゆるやかに退行変性が進行します。

 

(空気(水分)が抜ける → 固くなる→パンクしたタイヤのようになる → そんなイメージすると良いと思います) 関節軟骨や椎間板は消耗品といえるのです。

 

また、背骨に荷重が加わると、椎間板からは水分が押し出され、朝起きてから夜寝るまでに0.6~1.2ミリ薄くなるといわれています。

つまり日中の座ったり、立ったり、歩いたりという通常の活動をしているときは、椎間板が薄くなり、睡眠中に再び水分を吸収して厚みを取り戻します。この繰り返しによって、椎間板はその機能を保っているのです。

 

このように、睡眠は椎間板にとっても非常に重要です。

荷重が取り除かれると、再水化が起こり、椎間板機能がうまく保たれるのです。

 

タイヤに空気(水分)を入れる、またはスポンジが水を吸収するイメージしてみてください。

ただし、過度の安静や活動不足はかえって悪影響を及ぼすことが、MRI画像でも確認されています。

 

椎間板には脊椎神経硬膜枝という非常に細い神経が存在し、それらの異常が腰痛として脳に伝達する役割があります。

 

 

 

 

椎間板を意識することの重要性

 

椎間板の健康に意識を向けるかどうかで、将来的に腰痛に悩まされるかどうかが大きく変わってくるといっても過言ではありません。

通常、椎間板を意識して生活することは少ないかもしれませんが、背骨の約1/4もの厚みを持つ椎間板が、重要なクッションとして働いていることをぜひ知っておいてください。

日常生活の中で、姿勢・動作・運動の工夫により、重力による負荷をコントロールすることが大切です。

   

 

 

椎間板にやさしい生活習慣

 

 

椎間板にやさしいとされる具体的な習慣には以下のようなものがあります

 

・仰向けで寝る(椎間板に最もやさしい姿勢)

・背筋を伸ばす・姿勢を正す

・こまめに横になる・寝る

・懸垂などで背骨を伸ばす

・歩行時は横揺れや縦揺れを抑える

・クッション性の高い靴を選ぶ

・走るときは土や芝の上を選ぶ

・水中での運動・ヨガ・ストレッチ・柔軟体操

・荷物はリュックで背負う

・丹田(下腹部)を意識する

・背骨の調整を意識する

 

 

腰痛や足のしびれに苦しむか、歳を重ねても元気に動けるか──その分かれ道は「正しい知識と身体の使い方」にあります。

椎間板の役割と大切さを知り、日々の生活に少しだけ意識を向けることが、大きな財産になるでしょう。

 

 

 

 


 

椎間板障害は単なる腰痛にとどまらず、椎間板ヘルニアや変形性脊椎症、すべり症、脊柱管狭窄症などを誘引しうる、重大な問題

 


 

腰痛を考察するうえで、椎間板脊髄神経の硬膜枝、そしてそれらにかかる重力負荷は、非常に重要な鍵となります

 

 

 

 

 

 

慢性腰痛の原因として最も考えられる機序

 

 

 

 

 

【椎間板変性プロセス】

1. 不適切な負荷の繰り返し、あるいは経年劣化

 

 

2. 水分の消失・組織の劣化・構造的損傷

 

 

3. 摩擦・炎症・萎縮の進行

 

 

4. 修復反応の過程(血管新生・線維化)

 

 

5. 痛み・痺れの発生

 

 

6. 身体が保護・防衛するための筋緊張の亢進

 

 

7. 慢性腰痛へと発展


 

  

 

 

以降に生じる悪循環の流れ

 

 

さらなる負担の蓄積および加齢の影響

  ↓

筋肉の持続的な緊張

  ↓

炎症性の痛み

  ↓

椎間板への異常なストレスの集中

  ↓

筋緊張の慢性化 

  ↓

腰椎の不安定性

  ↓

椎体の変形・脊柱管の狭窄などの構造的変化

  ↓

神経障害の発生

  ↓

神経障害による痛みやしびれ(知覚異常・運動麻痺を含む)

 

 

上記が椎間板変性の流れです。変性がない部位には変形や狭窄、すべりは起こりません。したがって、椎間板に対するアプローチが重要であることが考えられます。