耳鳴りについての見解

 

 

 

日常生活における「適切ではない身体反応」

 

「危険??」と耳を澄ます反応について

 

少し想像してみてください。

今、ジャングルの中で一人取り残されてしまったとしたら──
あるいは、暗闇の中で「ゴソゴソ……」と何かの音がしたら?

そんな状況であれば、自然と耳を澄ませるのではないでしょうか。

 

現代社会で普通に生活している限り、ジャングルのような極端に危険なシチュエーションに直面することは滅多にありません。
しかし、情報過多な時代背景や、複雑な人間関係、ストレスフルな生活環境が、私たちの身体に本来適切ではない反応を引き起こしているのだと思います。

 

その結果、耳鳴りに限らず、さまざまな身体の異常として現れているのです。

 

 

 

 

耳鳴りは誰にでもある ― 環境と心理の影響

 

防音室での実験によると、普段は耳鳴りを感じない人でも「何か音がする」と感じることがあるそうです。

つまり、「音を感じる」「聞こえる」という現象は、誰にでも起こりうることであり、それを意識するかどうかの違いなのです。

 

「生理的な耳鳴り」という現象や状態は、もともと誰にでもあるもので、決して異常や病気ではありません。

実際、私自身も常にある程度の耳鳴りを感じています。
しかしある日、電波も届かない山奥――獣の声や風の音、木々のざわめきしか聞こえないような静かな場所――に行ったとき、耳を澄ませても耳鳴りをまったく感じませんでした。
それは本当に「無音」といえる体験でした。

 

そのとき私は、メールやLINEなどの連絡を確認したかったのですが、電波が一切届かず、仕方なく諦めました。
(もう開き直るしかなかったのです)

 

普段なら、耳を澄ませば必ず何かしらの音――耳鳴りのような感覚――が聞こえるのに、その時は本当に何も聞こえなかった。

……とても不思議な体験でした。

 

この出来事から私は、「耳鳴り」というものが、周囲の環境や受け取る側の心理状態に大きく左右されているのだと強く感じました 

 

 

 

 

複雑な音環境と耳鳴りの関係

 

[神経の過敏化と脳の変化]

私たちは、複雑で多様な音に囲まれた現代社会の中で暮らしています。

そのような環境下では、脳はわずかな音にも敏感に反応し、ほんの小さな音すら拾い上げてしまうようになります。
これは、神経細胞が過活動の状態にあることを意味し、結果として「耳鳴りを感じやすい脳」に変化してしまうのです。

 

また、難聴やわずかな聴力の低下が起こると、一部の聴覚野では音に対する反応(興奮領域)が減少します。
その代わりに、聞こえにくくなった周波数帯域に対応する脳の周辺領域や神経細胞が、補うように過剰に刺激されます。
これにより、神経の興奮や脳の可塑性(変化する性質)により、特定の神経細胞の数が増え、異常な信号が発生しやすくなります。

その結果、「本来あるべきではない新しい神経回路」が形成されてしまうのです。

 

そして、その領域において通常以上に強く、過敏に音が知覚されるようになります。
このようにして現れるのが、いわゆる「耳鳴り」なのです。

 

さらに、睡眠不足・疲労・ストレスなどによって、脳が興奮を抑える力(抑制機能)が低下すると、感覚はより敏感になり、より小さな音までも拾ってしまうようになります。

 

耳鳴りは「音そのもの」ではなく、脳と神経の働きに密接に関係する「反応」であるとも言えるでしょう。

 

 

 

 

 

耳鳴りの原因と身体の統合的な働き

 

耳鳴りの原因は、「脳内に悪循環のような神経回路が形成されている」とも言われていますが、そのメカニズムは現代医学においても、いまだ完全には解明されていません。

おそらく原因は一つではなく、
・内耳や聴神経の異常によるもの
・脳の聴覚野の機能異常
・あるいはその両方
といった、複雑に絡み合った要因が背景にあると考えられています。

 

実際、多くの方に見られるのは、筋肉・関節・神経が不適切に緊張し、結果として異常な働きをしている状態です。

このような症状には、以下のような身体のシステムが関係しています

 

・中枢神経系(脳・脳幹・脊髄)

・末梢神経系(運動神経・感覚神経・自律神経)

・効果器(関節・筋肉など)

 

これらの働きをバランスよく調整・統合していくことで、身体の適切な制御機能を高め、過敏になっている状態を落ち着かせることが可能になります。

 

また、「この症状や状態は命に関わるような危険なものではない」と、自分自身が認識することも、耳鳴りをコントロールする上で非常に重要な要素です。

 

不安や恐怖が強まるほど、脳の過敏な反応を助長してしまうため、まずは安心できる情報と環境が大切なのです。

 

 

 

 

 

耳鳴りへの根本的なアプローチと考え方

 

根本的な加療としては、不具合を起こしている神経細胞に栄養を届ける血管を拡張し、血流を増加させることで、神経の修復・再生を促すことが重要です。

具体的には、「スーパーライザー照射」や「整体」などを通じて、内耳や内耳に関係する神経への血流を改善し、自然治癒力を高めることで異常の改善を目指しています。

また、延髄や脳への動脈を拡張させて血流量を増やすことにより、脳の過剰な興奮を抑えることも、耳鳴りの軽減に効果を発揮していると考えています。

 

ただし、稀ではありますが、
髄膜炎・脳梗塞・聴神経腫瘍・硬膜動静脈瘻などの重大な疾患が原因で耳鳴りが生じている場合もあります。
そのため、症状や経過によっては、精密検査をお勧めすることがあります。

 

専門的な内容で、少し分かりにくい点もあったかもしれません。

当院では、来院された方に対して丁寧にお話を伺い、納得いただけるまでわかりやすくご説明することを心がけております。

 

耳鳴りなどでお困りの方にとって、少しでもお力になれれば幸いです。