画像検査を必要とする場合

 注意深い問診と身体検査の後

 

・危険信号あり

・神経症状あり

・非特異的腰痛(原因がわからない)          

・疼痛と機能障害に応じて4~5週間の保存的治療改善なし

 

(・患者教育・自己管理・危険信号の再評価・因性要素の再評価などの場合も必要の場合あり)

 

 

 危険信号(重篤な脊椎疾患、腫瘍、炎症、骨折などの合併を疑う)

 

・発症年齢が20歳以下、55歳以上

・時間や活動性に関係ない腰痛

・軽減せず悪化する疼痛

・安静時における高度な腰痛や下肢痛

・胸部痛

・癌、ステロイド治療,HIV感染の既往、薬物、アルコール多飲

・外傷がなく突然に腰痛や下肢痛が発生した場合

・栄養不良

・原因不明の体重減少と便通習慣の変化

・広範囲に及ぶ神経症状

・構築性脊柱変形(円背など)、脊柱所見から明らかに脊柱変形が疑われる

・著名な不橈性と可動域制限

・発熱

・最近または重大な過去の外傷

・以前の脊椎手術

・夜間痛、叩打痛

・炎症性リウマチ症候群

・糖尿病および高血圧

・尿路感染症(腎炎、膀胱炎、尿道炎)の既往歴

・尿が出ない、便失禁、肛門や会陰部の感覚がない

・骨粗鬆症や転移性脊椎腫瘍などを疑わせる既往や症状を有する

 

主訴の把握→考え得る病態のリストアップ→問診での絞り込み→理学所見の評価による絞り込んだ疾患の適否判定→画像検査による絞り込んだ疾患・病態の確認

 

 

その他具体的な状態、症状、疾患名

 

・尾骨骨折および脱臼

・恥骨不安定性(恥骨の非対称性を示す)

・腸骨三角形過骨症(腸骨緻密化骨炎、腸骨関節部分の凝縮が認められる)

・仙腸関節の骨関節炎(関節腔狭小化、軟骨下の硬化、軟骨下の嚢胞、周辺部の骨棘)

・強直性脊椎炎(仙腸関節の両側周縁部浸食と不規則性)

・化膿性仙腸関節炎(周縁部の浸食、不明瞭化)

・結核性仙腸関節炎(関節輪郭のぼやけ、骨の強直化)

・ライター症候群(下痢や性的接触の後で起こる、仙腸関節炎を示す)

・炎症性腸疾患(クローン病、周辺関節が急性関節炎を起こす)

・バジェット病(変形性骨炎、臀部の疼くような痛み)

・痛風(仙骨臀部の痛み、関節縁の硬化・浸食、嚢胞状の部位が見られる)

・腫瘍(骨軟化性、骨芽細胞性の病変が見られる)

・動脈瘤

・横突起、椎骨圧迫、棘突起骨折

・不安定骨折(軟部組織の腫脹があり透過性がみられる)

・脊椎分離症、すべり症

・脊柱管狭窄症

・椎間板の変性、ヘルニア(椎間板の厚みの減少および滑り)

・関節の変性病変、変形性脊椎症(関節腔の狭小化、軟骨下の硬化、辺縁性骨棘)

・外側狭窄(回旋・伸展ストレス撮影により骨棘の過成長、サブラクセーション)

・内臓体性症状(内臓疾患)

・潜在性脊椎破裂・二分脊椎

・関節ハイパーモビリティ(ストレス撮影により可動性亢進)

・移行型脊椎(移行型腰仙椎、未発育の関節突起など)

・骨性の側弯症(奇形、くる病など)

・依存性症候群(客観的所見の欠如)

・腎臓、尿路などの結石

 

     

X線検査では硬い骨や骨腫瘍しか映らないため、「骨の変形や破壊の程度」、「骨折や脱臼の有無」、「骨のズレ」、「関節のすき間がどれくらいか」などを確認するのに適しており、これらはX線検査だけでほとんど診断がつく。

逆に、椎間板の変性、神経や筋肉の損傷を調べることはできないのでMRIやCTを勧めることがある。

 

腰痛のうち約15%が特異的腰痛(原因が特定できる腰痛)

おおまかな内訳ですが、

椎間板ヘルニア 4~5%

脊柱管狭窄症 4~5%(腰痛よりも下肢症状(座骨神経痛など)が主訴)

圧迫骨折 4%

感染性脊椎炎や癌の脊椎転移 1%

大動脈瘤、尿路結石などの内臓疾患1%未満

その他は非特異的腰痛(原因の特定ができない)

 

その他、撮影を希望する症例、交通事故や労災補償が関係している症例などもX線検査を必要とする。

単純X線診断の位置付けは、感染性疾患などを含む脊椎炎、骨折、あるいは腫瘍のような重篤な病態を否定するためにあるといってよい。

撮影最大の動機は、重篤な疾患はないと患者を安心させたいという施術者側の希望であることも多い。

 

 

 参考文献

・診断(Adobe PDF)  http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/LBP/04_Ch3_LowBackPain.pdf

・菊地臣一 腰痛 医学書院 東京 P171~172 2006

・M・Iガッターマン、竹谷内宏明 監訳 エンタプライズ 東京 P127~128 P151~153 2000