最新の腰痛診療ガイドラインでは、運動療法について「行うことを強く推奨する(推奨度1)」と明記されています。
近年では、このエビデンスに基づき、整形外科領域の理学療法においても、運動療法やピラティスなどが、広く推奨されるようになってきています。当院においても、慢性腰痛に有効とされる症状に合わせた、能動的な運動療法を積極的に取り入れております。
ディープスクワットの効果
1. 腰痛予防に重要な筋肉をまとめて使う
ディープスクワット(深くしゃがむ動き)は、体のさまざまな筋肉を一度に使うことができる運動です。
腰まわりの筋肉をバランスよく動かすことで体幹や腰椎が安定し、腰痛の予防につながります。
また、反動を使わずにゆっくり体を動かす過程で、筋肉が自然に伸ばされるため、ストレッチ効果も期待できます。
主に働く筋肉
・大腿四頭筋
・ハムストリング
・大殿筋
・下腿三頭筋
・体幹筋(腹横筋・多裂筋・脊柱起立筋・腸腰筋)
これらの筋肉が協調して働くことで、腰椎・骨盤・下肢全体の安定性が高まり、腰への負担を軽減します。
2. 股関節主導の動きで腰痛リスクを減らす
腰痛の主な原因のひとつは、
「本来よく動くべき股関節が十分に動かず。その代わりに腰が代わりに動きすぎてしまう」という状態にあります。
スクワットは、腰を曲げる動作ではなく、股関節の曲げ伸ばしを中心に行う運動です。
そのため、スクワットを行うことで、
・腰ではなく股関節を使って動く感覚が身につきやすくなる
・腰の過剰な動きを抑えやすくなる
といった効果が期待できます。
股関節がしっかり動くようになると、腰が無理に動いて補う必要がなくなり、腰への余分な負担(代償的なストレス)が減っていきます。
このように、股関節主導の動きを身につけることは、腰を守り、腰痛を予防するうえでとても大切です。
3.骨盤と腰椎の位置をコントロールのすることの重要性
ディープスクワットでは、
骨盤と腰椎の位置関係を適切に保つことが非常に重要です。
腰椎は、無理に丸めたり反らしすぎたりするのではなく、自然なカーブ(ニュートラルな状態)を維持したまま動くことで、
腰椎に負担をかけにくくなり、安全で効果的な動作につながります。
【腰に負担がかかりやすい動き】
次のような動きがあると、腰への負担が増えやすくなります。
・腰が丸まる(腰椎が屈曲した状態)
・腹圧が入らず、体幹が不安定になる
・胸の位置が下がり、上半身が前に崩れる
このような状態では腰椎が不安定になり、
椎間板への負荷が増加します。その結果、背中の筋肉(脊柱起立筋)が伸ばされながら無理に働く状態(遠心性収縮)となり、
腰へのストレスが大きくなって、腰痛のリスクが高まります。
【腰を守るための改善ポイント】
腰への負担を減らすためには、
上記とは反対の状態をつくることが大切です。
・骨盤を前傾させ、腰椎の自然な前弯をつくる(骨盤を立て、腰椎がやや前弯になるくらいの角度を保つ)
・腹圧を高めて腰椎を安定させ、丸まりを防ぐ
・腹横筋・多裂筋・腸腰筋が働きやすい姿勢をつくる
この姿勢が安定すると、
脊柱起立筋に不要な負荷がかからず、股関節を主に使った動きがしやすくなります。
4. しゃがみ込みで働く筋の役割
下りる局面(遠心性収縮)=ストレッチ効果
・大殿筋
・大腿四頭筋
・前脛骨筋
これらの筋は、伸ばされながら動作を制御するため、ストレッチ効果によって柔軟性が高まり、同時に筋活動の協調が向上する。
(腰部、脊柱起立筋の遠心性収縮はリスクが大きい為、この場合はさせないように注意する)
支持・安定に働く筋
・ハムストリング
・下腿三頭筋
・腹横筋
・脊柱起立筋
・多裂筋
これらが働くことで、腰椎・股関節・体幹が安定する。
5.骨盤を立てる(前傾する)ことで得られる効果
・腰椎ニュートラルが保たれ、丸まりにくくなる(腰椎の前弯を維持することで、脊柱起立筋と椎間板への負担を軽減できる)
・多裂筋・腸腰筋が適正に収縮しやすくなる(短縮性の収縮)
・多裂筋、腸腰筋および大殿筋と腹横筋が連携し、体幹の安定性が向上する
・骨盤ポジションが整うことで、腰椎前弯の保持・体幹安定・深層筋の活性化が促される
・椎間板、椎間関節、腰仙関節、仙腸関節、股関節の適合性を高めることで、各部位や関節への負担が均等になり、ストレスが適切に分散され、消耗・摩耗・変形の予防につながる
多裂筋や腸腰筋は、
姿勢保持・分節安定性・骨盤と腰椎の安定、コントロールに深く関わる深層筋。
これらの筋は、自分の意思でギュッと力を入れる筋とは違い、
感覚入力 → 脊髄での統合 → 自動的な運動制御というプロセスで最も効率的に働かせることが、腰痛予防にとって非常に重要な要素なのです。
ポジションコントロールとは
正しい姿勢を作り、その姿勢を崩さずに動く能力。
本質的な3要素
1. 正しい位置に入れる能力
例:
・骨盤を立てる
・腰椎ニュートラル(腰椎の前弯)
・足部アーチを保つ
2. 正しい位置を保ったまま動ける能力
例:
・しゃがんでも腰椎が丸まらない
・動作中に腹圧が抜けない
・腰椎の屈曲で生じる脊柱起立筋の遠心性収縮をしない
3. 深層筋(安定化筋/関節や体幹を安定させるために働く筋)が働く状態
・多裂筋
・腹横筋
・腸腰筋
・中殿筋
これらが働かないと、アウター(脊柱起立筋・大殿筋・ハムストリング)が代わりに頑張り、痛みの原因となりやすい。
ディープスクワットにおけるポジションコントロールの実践
しゃがむ前
・骨盤を立て、できる範囲で腰椎の前弯を保つ
・胸郭が落ちないようにし、重心を前にしすぎない
・足の圧を適切に配置し、足底でしっかり体重を受ける
しゃがみこみ中
・骨盤が後傾して腰椎が丸まらないようにする
・腹圧を維持し、抜けないようにする(腰椎は1ミリも動かさない)
・多裂筋が働き、脊柱が安定する状態を保つ
立ち上がり
・腰部を安定させ、股関節、大殿筋が主動筋として使う
・過剰なアウターの代償動作が出ないようにする
ディープスクワットは最大限に深くしゃがみ込みつつ「股関節主導」で動き、骨盤と腰椎をニュートラル(安定および極めて低負荷)に保つ
ことで、多裂筋・腸腰筋などの深層および支持筋が正しく働く、これにより、腰痛予防と体幹安定に非常に効果的なエクササイズとなる。
さらに、深くしゃがむことで股関節周囲のストレッチ効果が得られ、骨盤を立てることで深層筋の適正な短縮性収縮が促される。その結果、 安定性向上・筋活性化・柔軟性の向上という効果が生まれ、正しく行うことで腰痛予防に非常に効果的な運動になります。
多裂筋・腸腰筋を求心性収縮させることで得られる効果
1. 神経-筋の活性化
・求心性収縮は、筋肉が最も「使いやすい」条件になるため、神経から筋への指令が通りやすく、活性化しやすい。
2. 筋の教育・運動の学習
・深層筋は本来「姿勢保持・安定制御」に使われる筋。
・求心性収縮を反復することで、神経と筋線維が正しいタイミングで働くようになり、適切かつ安全に機能するようになる。
・腰痛で抑制される多裂筋の再活性化。
3. 安定性の向上
・多裂筋 → 腰椎の分節レベルの安定
・腸腰筋 → 腰椎・股関節の安定
求心性で働かせると、腰椎・骨盤のニュートラル保持が安定し、代償作用が減る。
3. 安定性の向上(椎間板の保護を含む)
・多裂筋 → 腰椎の分節レベルの安定
・腸腰筋 → 腰椎・股関節の安定
・求心性で働かせることで、腰椎・骨盤のニュートラル保持が安定し代償が減少する。
・深層筋が適切に働き、椎体間の微細な動きを制御することで、椎間板にかかる過度な剪断力や圧縮ストレスが減り、結果として椎間板が保護される。
4. 過剰な負担が少なく安全に鍛えられる
・遠心性と比較して筋損傷のリスクが低い、結果的に継続しやすい。
多裂筋や腸腰筋を求心性収縮させることは、神経-筋の活性化、運動学習、椎間板を含む腰椎全体の安定性向上、筋機能の回復に特に有効であり、安全性も高い。







