とび出た椎間板は元に戻るのか?

 

 

とび出た椎間板は元に戻るのか?

 

結論から先に

椎間板ヘルニアが「元に戻る」ことは臨床的にほぼなく、「消失」も例外的な現象であり、実際の改善は構造の復元ではなく、炎症の鎮静や環境変化によるものと考えるのが妥当です。

 

 

 

【以下、説明および考察】

 

飛び出た椎間板(椎間板ヘルニア)が、完全に元の形・元の位置に戻ると断定できるケースは、多くありません。

「あるか・ないか」で言えば、

理論上・報告上は「ある」とされることはありますが、臨床的にはほぼ例外的であり、実質的には”ないに等しい”と考えるのが妥当です。

 

 

臨床的な考え方

施術や説明の場で用いる理解としては、次の認識が妥当です。

・あるか? → ほぼない

・起こると考えてよいか? → 考えない

・説明に使うべきか? → 使わない

 

 

 

 

 

では、椎間板ヘルニアは「消失」することがあるか?

 

椎間板ヘルニアは、画像上で「見えなくなる(消失する)」ことがまれにあります

ただしこれは、

飛び出た椎間板が元の位置に戻ったという意味ではありません。

体の働きによって、時間をかけて少しずつ吸収されていった結果、画像上で確認できなくなるということです。

 

なぜ消えるように見えるのか

体は、飛び出した椎間板の中身を異物(いらないもの)として認識し、

・体の防御反応が起こる

・炎症反応が生じる

・免疫細胞が集まる

・少しずつ分解・吸収される

といった過程を経て、時間をかけて小さくなり、結果として見えなくなることがあります。 

  

なぜ「まれにある」という表現を使ったのか

画像上の「消失」は、すべての椎間板ヘルニアで起こる現象ではありません。

起こりやすいのは

脱出型・遊離型など、条件が限られたタイプです。

時間も

数か月〜1年以上かかることが多く、頻繁に起こる現象とは言えません。

 

さらに、

症状の改善と画像上の消失は必ずしも一致せず、

症状が軽減していても画像上は残存しているケースが大半です。

 

 

 

椎間板が「元に戻らない」理由

1.椎間板は基本的に無血管組織で、再生能力は極めて限定的

椎間板は、外側:線維輪、内側:髄核からなる二層構造です。

血管分布が乏しい(ほぼ無血管)ため、損傷後の自己修復、再生能力は非常に限られています。

一度、線維輪が破綻して髄核が外へ逸脱すると、歯磨き粉を押し戻すように容易に元の位置へ戻る構造ではありません。

 

それでも「良くなった」と感じる理由

「元に戻った」と表現される場合でも、実際には次の変化が関与しています。

・ヘルニアの自然吸収(限定的)

・飛び出た髄核が時間をかけて分解・吸収される

・炎症の鎮静

 神経周囲の炎症が治まり、痛みやしびれが軽減する

・椎間板内環境の改善

 含水状態や内圧の変化、姿勢や動作、周囲筋の働きにより、突出が目立たなくなる

 

画像上の「改善」と医学的な考え方

・MRIなどで、ヘルニアが小さく見える

・神経への圧迫が軽減して見える

といった変化が確認されることはあります。

 

ただし、

「完全に正常な椎間板へ戻った」と証明することは難しい

というのが医学的に慎重な立場です。

 

臨床的に適切な表現

・「画像上、縮小・消失することがあることはある」

・「自然吸収によって目立たなくなることがある」

 

 

 避けたい表現

・「元に戻る」

・「押し込めば治る」

・「完全に修復される」

 

まとめ(要点)

椎間板ヘルニアは自然吸収により画像上消失することはあるただし、元の構造に完全に戻るわけではない

症状の改善と画像変化は必ずしも一致しない「小さくなる・吸収される・症状が軽減する」ことは起こり得るが、非常に限定的であると考えています。

 

 

 

 

では、定期的なケアで、椎間板スペースは改善するのか?

 

→「定期的なケアによって、髄核が元の場所に戻ることで椎間板スペースが改善する」と断定する表現は、医学的には慎重であるべきです。

 

椎間板と髄核の基本的な役割

椎間板は、

・髄核:水分を多く含み、衝撃を吸収する

・線維輪:髄核を包み、力を分散する

という役割を持っています。

 

健康な状態では、

髄核は中央付近に保たれ、

椎体と椎体の間の高さ(椎間板スペース)が維持されます。

 

 

「髄核が元に戻る」という表現について「髄核が元に戻る」という言葉は分かりやすい一方で、

・画像検査で明確に復位を証明できるケースは限られる

・髄核は自由に移動する液体ではない

・加齢や変性がある場合、完全な回復は起こりにくい

といった点から、学術的には断定しにくい表現です。

 

 

定期的なケアで起こりうる変化

定期的なケアによって期待されるのは、次のような変化です。

椎間板への負荷の軽減

 姿勢や動作が整い、過剰な圧迫が減る

・椎間板内環境の改善

 含水状態や弾力性が回復方向へ向かう可能性

周囲組織の機能改善

 筋や関節の働きが整い、力のかかり方が分散される

 

 

椎間板スペースはどう考えるべきか

椎間板スペースは、

・朝と夕方で変化する

・負荷や安静によって変わる

といった特徴があり、

 

固定されたものではなく、動的に変化する構造です。

そのため、「髄核が元に戻ったから改善する」のではなく、「負荷環境が改善し、椎間板が本来の厚みを保ちやすくなった結果として、

椎間板スペースが保たれる、または一部改善することがある」

と説明するのが、より正確です。

 

 

「定期的なケアによって椎間板への負担が減り、椎間板の水分状態や弾力性が改善することで、

結果として椎間板スペースが保たれやすくなることがあります」

 

 

 

 

 

実際に、出たものが引っ込むことはあるのか?

 

 

「一度外に出た髄核が、元の位置へ引っ込んで戻ることは、起こるとしても極めて例外的

というのが、現在の標準的な考え方です。

 

なぜ「戻らない」に等しいのか

構造的な理由

ヘルニアが起きている状態は、線維輪が破綻している状態です。

この時点で、

髄核を押し戻す「袋構造」は失われている

髄核は液体のように自由に出入りするものではないため、

自然に中へ引き戻される力学的条件はほぼ存在しません。

 

実際に起きているのは「引っ込む」ではなく「減る」

臨床や画像上で見られる改善は、

・髄核が分解、吸収されて量が減る

・炎症が治まり、神経の腫れが引く

・内圧や含水状態の変化で突出が目立たなくなる

といった変化です。

 

つまり、

位置が戻るのではなく、影響が小さくなるという現象です。

 

 

「戻ったように見える」ケースの正体

「戻った」と表現されるケースの多くは、

・膨隆型ヘルニアの形状変化

・内圧変動による見かけの変化

撮影条件やスライスの違い(この例は非常に多い)

によるものです。

 

脱出型・遊離型ヘルニアが線維輪内へ復位すると考えられる報告は、非常に限られています。

 

 

 

 

 

画像評価における注意点

 

 

MRIは、数ミリ間隔で撮影される連続断面画像であり、

スライス位置の違いによって病変の見え方は大きく変化します。

 

具体的には、

最大突出部を通るスライスでは、椎間板ヘルニアは大きく描出されやすく、

そこから数ミリ外れたスライスでは、突出が小さく見えたり、確認できなくなることがあります。

このような位置の異なる2枚の画像を並べて、

・「改善した」

・「消失した」

・「小さくなった」

と評価することは、画像診断として適切ではありません。

 

しかし実際には、このような説明がWeb上で紹介されている例がほとんどです。(ご興味がありましたら詳しく解説します)

これらの違いは、時間経過による変化ではなく、断面位置の違いによる見え方の差に過ぎないためです。

 

 

 

正しい画像評価の前提

椎間板ヘルニアの縮小や消失を画像上で評価するためには、

・同一方向

・同一スライス位置

・異なる時期(数か月以上の経過)

での比較が必要です。

 

同一検査内でのスライス差を用いた評価は行うべきではありません

 

 

 

要点の整理

MRIでは、スライス位置の違いだけで椎間板ヘルニアの見え方は大きく変化します

そのため、同一検査内で位置の異なる画像を比較して、縮小や消失を判断することはできません。

 

 

最終まとめ

一度外に出た髄核が、物理的に「引っ込んで元に戻る」ことは、ほぼありません。

改善の本質は、

・自然吸収(起こるとしても極めて限定的)

炎症の鎮静

・周囲環境の改善

にあります。

 

 したがって、

「戻る」という表現は、厳密な意味での事実というより、説明上の比喩に近い表現と考えるのが妥当です。