痛み止めについての見解
痛みや炎症は重要な生体反応であり、それを正しく認識することが大切です。
炎症は、生体にとって不要なものや、細菌・ウイルス・毒物などの内的・外的なストレスを排除するための防衛反応であり、損傷した組織を修復する過程で必要な反応である。
【炎症と修復の流れ】
血管拡張
→ 傷害部位に血流が増え、免疫細胞や栄養分が集まる
異物処理(異物除去・貪食)
→ 好中球・マクロファージなどが細菌や壊死組織を貪食・除去
血管新生
→ 新しい毛細血管が形成され、修復のための環境を整える
肉芽組織形成
→ 線維芽細胞や新生血管が集まり、組織が再生していく
コラーゲン線維の沈着(再構築)
→ 主に線維芽細胞がコラーゲンなどの細胞外基質を産生
瘢痕形成(構造強化)
→ 肉芽組織が線維化し、傷が閉じて組織の再構築が進む
成熟と微細炎症の繰り返し
→ 瘢痕組織が時間をかけて成熟しつつ、慢性的に軽度炎症が残る場合もある
補足
「成熟と微細炎症を繰り返す」は、慢性炎症や治癒遅延の特徴です。急性炎症では通常ここまで至らずに治癒することが多い。
炎症は「悪」ではなく、生体の防御・修復に必要不可欠な反応である。
しかし現代医療や市販薬の使用状況を見ていると、プロスタグランジンなどを抑制する薬剤(NSAIDsなど)を過剰に、あるいは安易に使用しているケースが少なくないのが現実ではないでしょうか。
【プロスタグランジン抑制薬(NSAIDsなど)の働きと懸念点】
薬剤名:アスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェン、ジクロフェナク など
製品名:バファリン、イブ、ロキソニン、ボルタレン など
働き
COX(シクロオキシゲナーゼ:体内で炎症や痛みの原因となるプロスタグランジンを産生する酵素)を阻害し、プロスタグランジンの産生を抑制することで、発熱・痛み・腫れを緩和する。
懸念点
NSAIDsなどによってCOXが阻害されると、急性炎症における生理的プロセス(治癒促進、血流増加、免疫細胞の動員)まで抑制される可能性がある。
また、プロスタグランジンは胃粘膜の保護や腎血流の調節にも関与しているため、その産生が抑制されることで、胃障害や腎機能障害のリスクが高まる。
さらに、NSAIDsを過剰または長期に使用することで、慢性炎症の助長や組織修復の遅延を引き起こす可能性もある。
「炎症を抑える」ことと「炎症を完全になくす」ことは本質的に異なる。特に急性炎症は、感染や組織損傷からの回復に不可欠な生理的反応であり、これを無理に排除すると、かえって回復を妨げる結果になる場合がある。
ただし、慢性炎症や過剰な痛みが日常生活を妨げる場合には、薬の適切な使用が必要となることもある。治療は個別の症状や状況に応じて慎重に判断すべきである。
軽度の痛みでれば薬を使わず、自然治癒を優先(安静・水分・睡眠)。
明確な原因のある急性炎症(例:外傷後の痛み)は、短期間のみNSAIDsを使用し、最小限に留める。
慢性炎症(関節リウマチなど)の場合は、医師と相談し、免疫調節剤や生活習慣を改善させる。
効かないと認識しながらの服用は、原則として避けるべき。症状の裏にある原因を無視しがちで、慢性痛に移行しやすい。
【長期服用による問題点】
・肝臓や腎臓への負担:薬物代謝や排泄が続くことで、臓器機能に障害をきたす可能性がある。
・胃粘膜保護作用の低下および胃酸分泌の増加:これにより、胃炎や胃潰瘍のリスクが上昇。
・依存性の形成:長期間使用することで、薬がないと不安・不快を感じやすくなる。
・薬剤耐性の発生:同じ量では効果が感じられなくなり、使用量が増える傾向に。
・慢性痛への移行:一時的な痛みが長期化・習慣化し、慢性疼痛へと変化する可能性。
・根本原因の進行:痛みを一時的に抑えるだけで、疾患の根本的な原因が進行してしまい、最終的には外科的治療(手術など)が必要となるケースもある。
【まとめ】
・炎症は「悪」ではない。むしろ、感染や損傷からの回復に必要な生理的反応である。
・NSAIDsの乱用は、治癒を遅らせたり、肝臓・腎臓・胃などへの副作用リスクを高める可能性がある。
・「炎症を抑える」ことだけでなく、「自然治癒力に任せる」という視点も、現代医療においては重要である。
・薬は「必要な期間だけ使用する」のが原則。
・多くの薬は、症状を一時的に抑える/緩和するための手段であり、根本的な原因の治癒とは異なることを理解しておく必要がある。
・原因が改善された場合には、減量や中止を適切に検討することが望ましい。
・常に副作用のリスクとベネフィット(利益)のバランスを考慮する。
・症状を抑えることで日常生活動作(ADL)やQOL(生活の質)を一時的に高めることも可能だが、その間に疾患の進行を見逃さない配慮が必要である。
・薬は「上手に使う」ことで、治療のサポートとして有効に働く。







