遠心性収縮を控えることで腰痛を予防する

 

 

遠心性収縮について

 筋肉が伸ばされながら力を発揮する収縮

 

求心性収縮(筋肉が短縮しながら力を発揮する)に比べて、遠心性収縮の方が筋損傷を起こしやすいことは、多くの研究で明らかにされています。

 

 

収縮をイメージしやすい例

求心性収縮(concentric):筋が短くなりながら力を発揮する。

 例)ダンベルを持ち上げるときの上腕二頭筋。

遠心性収縮(eccentric):筋が伸ばされながら力を発揮する。

 例)ダンベルをゆっくり下ろすときの上腕二頭筋。 

 

 

遠心性収縮の特徴

遠心性収縮では、筋肉が引き伸ばされながら収縮しています。

このとき、筋線維(特に筋原線維:アクチンとミオシンの結合部)が引き離されるような力を受けます。

そのため、筋肉内で強い張力が発生し、一部の筋線維が微細損傷を受けやすい。

この微細損傷が積み重なると、筋肉痛(遅発性筋肉痛)や筋膜損傷として現れます。

 

 

比較 

求心性収縮/筋肉が短縮しながら収縮するため、損傷のリスクが低く、筋肉痛も起こりにくい。最大出力を発揮しやすい。

遠心性収縮/筋肉が伸張(伸び)しながら収縮するため、損傷のリスクが高く、筋肉痛が起こりやすい。

 

 

生理学的な背景

遠心性収縮では、アクチンとミオシンの結合が強制的に引き離されます。

そのため、筋膜や結合組織への負担も大きくなります。

さらに、神経制御のタイミングも難しく、非常に微細な調整が求められます。
これらの要因が複合的に作用することで、筋損傷のリスクが高まります。

 

 

実際の例

・下り坂を歩く、階段を下る
・ウェイトをゆっくり下ろす
・ジャンプやランニングの着地動作など

いずれも遠心性収縮が多く関与します。

 

これらの動作は、筋肉痛を引き起こしやすい傾向があります。

「遠心性収縮によって損傷しやすい筋肉」は、主に重力に抗って「ブレーキ」をかける役割を持つ筋肉です。

 

 

 

 

 

【代表的な筋肉】

 

1. 大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)

・下り坂を歩く/階段を下る

・スクワットでしゃがむ動作をゆっくり行う

・ジャンプの着地時

 

スクワットでは、しゃがむときに大腿四頭筋が伸ばされながら制御的に力を出す(遠心性収縮)ため、強い張力が発生します。

一方、立ち上がるときは筋が短縮するため、求心性収縮です。

 

下り動作では、体重を支えながら膝が曲がる方向に動きます。

そのときも、大腿四頭筋は、伸ばされながら制御的に力を出す(遠心性収縮)ため、

膝関節周囲で非常に大きな張力が発生します。

→ 特に、大腿直筋・外側広筋が損傷を受けやすいです。

→ 登山後や下り坂後の「太もも前の筋肉痛」は、まさにこれが原因です。

 

 

 2. ハムストリングス(太ももの裏)

 

ランニング中の着地から蹴り出し直前にかけて、脚が前方に振り出された状態でブレーキをかける際、ハムストリングスは伸ばされながら制御的に収縮します。

特に全力疾走時には、筋線維にかかる張力が非常に高まり、肉離れの好発部位となります。

 

また、スクワット動作においても、しゃがむときには股関節が屈曲方向に動くため、ハムストリングスは股関節を伸展側に引く力を持ちます。このとき、動きを制御するために遠心性収縮(制動)をかける必要があります。
つまり、しゃがむスピードをコントロールする「股関節のブレーキ」として機能します。

 

補足:スクワット動作におけるハムストリングスの作用

スクワットの下降局面では、膝関節では求心性収縮(やや短縮する方向)となります。
ただし、実際の膝の制御は主に大腿四頭筋の遠心性収縮によって行われるため、ハムストリングスの膝屈曲作用は補助的・安定化的な役割にとどまります。一方、股関節では遠心性収縮(伸ばされながら制動)が起こり、
しゃがむ動作のスピードをコントロールする“ブレーキ”として機能します。

 

その結果、ハムストリングス全体としては、膝関節での短縮方向と股関節での伸張方向の力が釣り合い、ほぼ等尺的(安定的)な収縮を示します。

 

 

 3. 下腿三頭筋(ふくらはぎ:腓腹筋・ヒラメ筋)

・坂道や階段を下る

・ジャンプの着地

・かかとをゆっくり下ろす

 

足首が背屈(上に反る)方向へ動く際に、ふくらはぎの筋群が引き伸ばされながらブレーキをかけます。

特に腓腹筋の遠心性収縮が強く働き、筋肉痛やアキレス腱周囲の張りが生じやすくなります。

 

 

4.上腕二頭筋(腕の前)

・ダンベルをゆっくり下ろす

・引き寄せた物を戻す動作

 

 

物を下ろすとき、上腕二頭筋は伸ばされながら制御的に力を発揮する(遠心性収縮)ため、

筋原線維が伸びた状態で緊張します。

このため、引き寄せるときのように短縮しながら収縮する場合(求心性収縮)に比べて、エネルギー効率は低く、筋線維への負担が大きく、損傷しやすいのが特徴です。

 

 

 

 

 

 

 

以下より本題です

 

5. ・脊柱起立筋群

前屈動作の制動および上体を起こす動作に関与します。

これらの動作を繰り返すことで、脊柱起立筋群に微細な筋損傷が生じ、腰痛につながることがあります。

前屈と起き上がりは逆の動きですが、脊柱起立筋群はその両方で働きます。前屈時には上体が急に倒れすぎないよう制動し、起き上がり時には体幹を伸展させて上体を起こします。

そのため、前屈や起き上がり動作では、背骨、特に腰椎を過剰に動かさないように固定し、股関節や膝関節を主に使うことが、損傷予防のために重要です。

 

 

 

 遠心性収縮は、力を出したまま、筋肉が引き伸ばされながら強い力を発揮するため、筋線維にかかる機械的負担が大きく、損傷を起こしやすいという特徴があります。

したがって、トレーニングや日常動作の中では、

急激な遠心性収縮を避け、動きをコントロールしながら行うことが重要です。

また、求心性収縮と遠心性収縮のバランスを意識することが、筋の健康維持や損傷予防の鍵となります。

 

 

 

 

 

 

 



 

 上半身の重さに対する筋の働き

左:脊柱起立筋が遠心性に収縮しており、筋線維が伸ばされながら過活動となっている状態

右:ドローイン(息を吐きながら下腹部を凹ませる)を行うことで、腹横筋や多裂筋などの体幹筋が効果的に収縮し、大殿筋やハムストリングスの活動が増加するとともに、脊柱起立筋の過剰な活動が抑制された状態となる

 

右のような筋の使い方を、運動学習によって習得することが重要です。

左では腰椎および椎間板に負担がかかりやすい一方、右の図では腰椎が固定されているため、腰椎や椎間板が保護され、損傷を受けにくくなります。その結果、筋筋膜性障害、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの変性疾患の予防につながります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・腰痛予防に重要なドローイン(腹部引き込み運動)