腰痛の予防に最も重要なこと

 

 

腰部多裂筋と大腰筋がバランスよく働くことで、仙骨が適切に立ち、骨盤前傾と腰椎前弯が保たれます。そこに腹横筋の働きが加わることで、腹圧が高まり、体幹がより安定します。

 

多裂筋

大腰筋


腹横筋

 

 

 

 

 

【腰痛予防の基本的な考え方】

 

結論から述べると、腰部に過度な伸張ストレス(遠心性収縮)を生じさせないような身体の使い方を心がけることが重要です。とくに、腰痛を予防するうえでは、脊柱起立筋群に過度な負担をかけすぎないことが大切です。

特に、前かがみになるときに脊柱起立筋群が強く働きすぎると、腰への負担が増えやすくなります。

ただし、腰痛予防において本来最も重要なのは、十分な睡眠と休息をとることです。

回復が不十分な状態で同じ負担を繰り返すと、筋肉や関節に疲労がたまり、痛みにつながりやすくなります。

ここでは、特に「体の使い方」という観点から解説します。

 

【脊柱起立筋群】

脊柱起立筋群とは、背骨に沿ってついている筋肉の集まりです。

主に、姿勢を保ったり、上体を起こしたりする働きがあります。

いわば、体をまっすぐ支えるための「背中の支柱」のような筋肉です。

 

【前屈や起き上がりで腰に負担がかかる理由】

脊柱起立筋群は、次のような動作でよく働きます。

・前かがみになる動作

・前かがみの姿勢から上体を起こす動作

前屈と起き上がりは反対の動きですが、どちらの動作でも脊柱起立筋群は重要な役割を果たします。

前かがみになるとき、上体は重力によって前に倒れようとします。

このとき脊柱起立筋群は、上体が急に倒れすぎないようにブレーキをかけるように働きます。

このように、筋肉が伸ばされながら力を出す働きを伸張性(遠心性)収縮といいます。

一方で、前かがみから起き上がるとき、背中の筋肉は「体を後ろに引き戻す」ように働きます。

これによって、前に倒れた上体をまっすぐに戻しやすくなります。

 

【繰り返しの負担が腰痛につながる】

前屈や起き上がりの動作を何度も繰り返すと、脊柱起立筋群には小さな負担が積み重なります。

特に、腰だけを大きく曲げたり伸ばしたりする動作が続くと、筋肉に微細な損傷が起こりやすくなります。

この小さな損傷や疲労の蓄積が、腰痛の原因になることがあります。

 

【腰を守る体の使い方】

腰痛を予防するためには、前屈や起き上がりのときに、腰椎、つまり腰の背骨を過剰に動かしすぎないことが大切です。

そのためには、腰だけで動くのではなく、股関節や膝関節をしっかり使うことが重要です。

たとえば、物を拾うときや前かがみになるときは、腰だけを丸めるのではなく、軽く膝を曲げて、股関節から体を折りたたむようにします。すると、腰への負担が減り、股関節や脚の筋肉に負担を分散しやすくなります。

 

 

腰痛予防では、まず十分な睡眠と休息によって、体をしっかり回復させることが基本です。

そのうえで、日常動作では、脊柱起立筋群に過度な伸張性(遠心性)収縮を繰り返させないことが大切です。

前かがみや起き上がりの動作では、腰だけで動かず、股関節や膝を使って動くことで、腰への負担を減らしやすくなります。

つまり、腰痛予防のポイントは、「しっかり休むこと」と「腰だけに頼らない体の使い方」です。

 

 

 

 

 

【過度な伸張性収縮を避ける腰痛予防の考え方】

伸張性収縮とは、筋肉が力を出したまま、引き伸ばされながら働く収縮のことです。

たとえば、前かがみになるときに上体が急に倒れないよう、背中の筋肉がブレーキをかけるように働く場合がこれにあたります。

伸張性収縮では、筋肉が引き伸ばされながら強い力を発揮するため、筋線維には大きな機械的負担がかかります。

そのため、短縮性(求心性)収縮、つまり筋肉が縮みながら力を出す働きに比べて、筋肉に小さな損傷が起こりやすいという特徴があります。

したがって、トレーニングや日常動作では、急に体を落とす、急に前かがみになる、反動を使って動くといった動作を避けることが大切です。

動作は勢いに任せるのではなく、筋肉でコントロールしながら、ゆっくり丁寧に行うことが損傷予防につながります。

また、筋肉の健康を保つためには、筋肉が縮みながら働く短縮性収縮と、伸ばされながら働く伸張性収縮の両方を適切に使うことが重要です。特に腰痛予防の観点では、急激または過度な伸張性収縮を避けることが大切になります。 

 

 

 

 

 

左:伸張性収縮(できるだけ控える)

右:短縮性収縮(こちらの使い方を強く推奨)

なお、急性腰痛や強い痛みがある場合は、自然と右側の動きになることが多いと考えられます。

調子の良いときでも、右の求心性収縮を意識した運動コントロールを行うことをおすすめします。

 

 

 

 

 

 

 

 

上半身の重さに対する筋の働き

左:脊柱起立筋が伸張性(遠心性)に収縮しており、筋線維が伸ばされながら過活動となっている状態

右:ドローイン(息を吐きながら下腹部を凹ませる)を行うことで、腹横筋や多裂筋などの体幹筋が効果的に収縮し、大殿筋やハムストリングスの活動が増加するとともに、脊柱起立筋の過剰な活動が抑制された状態となる

 

右のような筋の使い方を、運動学習によって習得することが重要です。

左では腰椎および椎間板に負担がかかりやすい一方、右の図では腰椎が固定されているため、腰椎や椎間板が保護され、損傷を受けにくくなります。その結果、筋筋膜性障害、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの変性疾患の予防につながります