レントゲンで骨の間が狭いといわれた

 椎間板腔狭小化の解説(L5-S1

 

 

MRI検査が最も詳細な評価を可能にしますが、実際の臨床現場では、まずレントゲン検査が行われ、その際に「骨の間が狭くなっている」と説明されることが多くありますが、その所見の意味について解説します。

 

 

 

レントゲンで見える「椎体(骨)の間が狭い」とは

 

レントゲンで「骨と骨の間が狭い」と言われるのは、背骨と背骨の間にある椎間板(クッションの役割をする軟骨組織)が、少しずつ薄くなっていることを意味します。

椎間板は、年齢や日常生活での負担によって水分が減り、弾力を失っていくため、徐々に薄くなることがあります。その結果、レントゲンでは骨と骨のすき間が狭く見えるようになります。

この「骨の間が狭い」という所見は、椎間板の変性やすり減りが進んでいる可能性を示しています。必ずしも強い痛みが出るとは限りませんが、腰痛や神経の圧迫によるしびれの原因になることがあります。

特にL5-S1(腰椎の一番下の部分)は、体重や動作の負担が最もかかりやすいため、加齢や使いすぎで変化が起こりやすく、レントゲンで椎間板の隙間(椎間板腔)が狭く見られることがあります。

 

 

 

椎間板が薄くなると、

・椎間板の変性(加齢や負担による水分・弾力の低下)が起こり、クッション性が落ちて衝撃を吸収しにくくなる

・隣接する骨や椎間関節への負担が増加し、腰痛や坐骨神経痛の原因になりやすい

・さらに進行すると、椎間板ヘルニア・腰椎すべり症・脊柱管狭窄症などの変形性腰椎症へと発展する可能性がある

つまり、レントゲンで見える「骨と骨の間が狭い」という所見は、単なる“すき間の減少”ではなく、椎間板の変性(中の水分や弾力の低下、構造の変化)を反映しており、腰痛や神経症状と深く関係する大切な情報です。

 

 

 

椎間板の組織学的変化

 

主な変化

・水分量減少、プロテオグリカン減少

→ 保水性が低下し、椎間板は硬く乾いた状態となり、弾力性・衝撃吸収機能が低下する。

 

・Ⅱ型コラーゲン減少(弾力・柔軟性をもつタイプ)   Ⅰ型コラーゲン増加(硬くて引っ張りに強いタイプ)

→ 本来ゼリー状で柔軟な髄核が硬化し、外周の線維輪は硬く脆くなって亀裂が入りやすくなる。

→ 結果として椎間板全体のしなやかさが失われ、衝撃吸収機能が低下する。

 

・硬化・石灰化

→ 終板(椎体と椎間板の境目にある薄い軟骨の層。ここを介して栄養や老廃物が拡散する)や線維輪の柔軟性がさらに失われる。

→ その結果、椎間板への栄養供給が低下し、脆弱化が進行する。 

 

備考:プロテオグリカン(タンパク質+糖鎖)※糖鎖=水を引き寄せる糖の鎖

椎間板の髄核に多く含まれ、水分を保持してゼリー状の弾力を支える。

減少すると水分保持力が落ち、椎間板の縮小と機能低下を招く。

 

 

まとめ

椎間板が「薄くなる」=単に水分が抜けただけではなく、プロテオグリカンの減少 → 水分保持力の低下 → 弾力喪失

コラーゲンの質的変化(Ⅱ型減少・Ⅰ型増加) → 硬化・柔軟性低下

という 組織学的な変化の積み重ねが背景にあります。

 

 

 

 

椎間板狭小化の背景にある4つの要因

 

椎間板変性の流れ

消耗 → 摩耗 → 劣化 → 萎縮

1.消耗:長期にわたる荷重ストレス・繰り返しの圧迫や動作・椎間板に日常的な「使い減り」が生じ始める段階

2.摩耗:線維輪に小さな断裂や擦り切れ → 進行するとヘルニアの原因になるが、まだ「物理的な損傷レベル」で、組成自体の変化は軽度、椎間板に日常的な「使い減り」が生じ始める段階

3.劣化:成分変化(水分・プロテオグリカン・Ⅱ型コラーゲン減少、Ⅰ型増加)→椎間板が硬化 質的な変化が進み「硬くて弾力性がない」椎間板になる

4.萎縮:水分減少により容量が減り、椎間板の高さが低下 → レントゲンで「椎間腔が狭い」として表れる

 

 

・消耗/摩耗 → 機械的な負担で起こる変化

・劣化 → 組成そのものの質的変化

・萎縮 → 水分減少と容量低下による高さの減少

 

 

 

したがって、椎間板の「薄くなる」背景にはこれらすべてが関与しており、

重力負荷 → 摩耗 → 組成の劣化 → 萎縮 という総合的なプロセスが、すなわち 椎間板変性=狭小化 です。

その典型例が L5-S1椎間板 であり、腰痛や神経症状の原因になりやすい部位です。

また L4-L5椎間板 でも同様に変化が多く、臨床上しばしば問題となっています。

 

 

 

変形性腰椎症の進行と各病態

 

1.椎間板変性:(初期変化)

・椎間板の水分やプロテオグリカンが減少し、弾力性が低下。

・椎間板が薄くなり、椎体間が狭くなる。

・この段階で「椎間板症」と呼ばれることもある。

 

2.椎間板ヘルニア

・弾力を失った椎間板の髄核や線維輪が突出し、神経を圧迫。

・急性の腰痛(ぎっくり腰様)や坐骨神経痛を引き起こす。

・若年〜中年期に多い。

 

3.腰椎すべり症

・椎間板や椎間関節の支持力が低下する。

・その結果、椎体が前方へずれる(前方すべり症)。まれに後方へずれる「後方すべり症」もあるが、非常に少ない。

・女性に多く、とくに更年期以降。高齢者に多い。

・おもに成長期に発症する「分離すべり症」と併せてみられることがあります。

・椎体がずれることで脊柱管が狭くなり、進行すると脊柱管狭窄や神経圧迫を悪化させる。

 

4.脊柱管狭窄症

・椎間板の膨隆、椎体の骨棘形成、すべり、靭帯肥厚が重なり、脊柱管(神経の通り道)が狭くなる。

・間欠性跛行(歩くと脚がしびれて休むと回復)が特徴。

・高齢者に多く、変形性腰椎症の「最終段階」に近い病態とされる。

 

 

 

「椎間板変性」から必ず「すべり症」や「狭窄症」に進むわけではありません。

しかし、加齢変化が進行すると、これらの病態が連続的あるいは重複して発生しやすくなります。

 

 過度で偏った姿勢や動作、局所での反復動作や刺激、運動による過剰な負荷、椎間関節の機能不全、さらには加齢による退行変性などが要因となり、

椎間板変性 → 椎間板の膨隆(ヘルニア) → 椎間不安定(すべり症) → 脊柱管狭窄

という進行が典型的なパターンです。この過程において、腰痛・坐骨神経痛・しびれ・間欠性跛行といった症状が現れることが少なくありません。