椎間板ヘルニア

症例報告

腰痛関連:椎間板ヘルニア

 

臨床報告

症例

46歳 男性 デスクワーク従事 剣道

身長:185cm 体重:70kg

 

主訴

腰部痛、左下肢の痛みおよび痺れ

 

既往歴

15年前に腰椎椎間板ヘルニアと診断。以降、断続的に腰痛と左下肢痛が持続している。今回も整形外科にて腰椎椎間板ヘルニアと再診断された。

 

現病歴

学生時代から剣道を継続してきたが、近年は疼痛により継続困難となっている。

発症以降、腰痛および左下肢痛が周期的に増悪・寛解を繰り返していた。

最近では腰痛に加えて、左足母趾および下腿外側のしびれを自覚。歩行困難を呈するようになった。

仕事は何とか継続しているものの、疼痛のため集中力が持続しにくい状態である。

 

現在は整形外科より鎮痛薬を処方され服用中。症状改善を目的に、同僚の紹介で当院を受診した。

 

 

 

カイロプラクティック評価

腰の可動域を全方向から評価した結果、前屈・後屈の動作には大きな問題は見られなかったが、左後方へ捻転する動作にて坐骨神経痛の再現が確認された。

骨盤にある仙腸関節の両側に可動制限が認められ、脊椎全体の可動性も低下していた。これにより、日常生活における重力負荷が下部腰椎に集中し、症状を引き起こしていると考えられた。

骨盤の変位は認められなかったが、脊椎全体の椎間関節および仙腸関節の機能低下がみられた。これにより荷重が右側に偏り、右肩の下垂、左腰部筋および右殿部〜大腿後部の筋緊張の亢進、ならびに腰椎の前弯減少が確認された。また、腹臥位にて股関節の柔軟性低下も認められた。

 

関節の可動制限(フィクセーション)は、間接的に腰椎や股関節の動作に影響を及ぼし、下部腰椎への重力負荷集中を助長することで、椎間板ヘルニアの悪化要因となると考えられる。よって、フィクセーションを改善することにより、下肢痛の軽減のみならず、疼痛回避のために発生する二次的な機能障害や代償動作の抑制にも寄与すると考えられる。

幸いにも初診時点で痺れの軽減が確認され、フィクセーションの改善とともに症状も改善傾向を示した。

 

 

 

 

病態の推察

関節の可動制限(フィクセーション)は、間接的に腰椎および股関節の動作制限を生じさせる。

これにより下部腰椎への重力負荷集中を助長し、椎間板ヘルニアの悪化要因となる可能性がある。

したがって、フィクセーション改善は下肢痛軽減のみならず、二次的な機能障害や代償動作の抑制にも寄与すると考えられる。

幸いにも初診時点にて痺れの軽減が確認され、フィクセーション改善とともに症状も改善傾向を示した。

 

 

 

考察

椎間板は加齢により30歳以降から徐々に水分が失われ、変性が進行することが知られている。そのため、多くの人に潜在的な椎間板変性が存在し、無症候性の椎間板ヘルニアも少なくない。

 

今回の症例では、初診時にMRI検査画像を持参いただいたことにより、より正確な評価と適切なアプローチ選択が可能となった。

坐骨神経痛あるいは坐骨神経痛様の下肢痛を引き起こす疾患としては、腰椎椎間板ヘルニアのほか、腰椎サブラクセーション(関節の位置異常)による神経根刺激、椎間関節の不適合による放散痛、仙腸関節のサブラクセーション、腸脛靭帯やハムストリング筋の緊張による筋性疼痛、梨状筋症候群などの神経絞扼障害、脊椎すべり症、変形性脊椎症など、多岐にわたる可能性がある。

本症例では、MRI画像上は腰椎椎間板ヘルニアの所見があったものの、フィクセーションの除去や椎間関節の牽引による除圧治療により症状が改善されたため、椎間関節症による神経根周囲の炎症刺激が主な原因であった神経根症であったと推察された。

 

 

 

 

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